ユニファ開発者ブログ

ユニファ株式会社プロダクトデベロップメント本部メンバーによるブログです。

心理的安全性がもたらす効果と、安全性を阻害するBadパターン

こんにちは。スクラムマスターの渡部です。

最近出版された「心理的安全性のつくりかた*1」という本が、発売から2ヶ月経たずに4版決まった*2り、Tech系カンファレンスでも心理的安全性についてのセッションがあって*3かなり盛り上がったりと、心理的安全性機運の高まりを感じている昨今です。

当然(?)ながら僕も「心理的安全性のつくりかた」を読んで、短期的にも長期的にも今後のふるまいを見直す良いきっかけになりました。

ただ、いかんせん「心理的安全性ってわかりにくい言葉だなぁ」という感想は今でも変わっていないので、備忘的な意味で次の2つのことをブログに残したいと思います。

このブログで扱うこと

  • そもそも、心理的安全性ってなに?どんな効果があるの?
  • 心理的安全性を阻害するBadパターン

このブログで扱わないこと

  • 心理的安全性を構成する4つの因子の詳細
  • いかにして心理的安全性を高めていくか?

これらは書籍「心理的安全性のつくりかた」を参照していただくか、どこか別の機会で「ユニファにおける取り組み」などをご紹介できればいいかなぁと思っています。

心理的安全性について

そもそも、心理的安全性とは何か?

心理的安全性は、Google の調査結果によってビジネスの世界で一気に広まった概念です。(Googleが定義したものではありません)

rework.withgoogle.com

本来の定義としては「チームの中で、対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと*4」とされています。

若干難しいので、本の中で紹介されてる次の考え方がわかりやすくて僕も好きです。

一言でいうと「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと*5

心理的安全性の効果

定義はなんとなくわかりましたが、結局、それがあることでどんな効果があるのかがわからないと、興味もわかないですよね。

Googleによれば、以下の説明がありました。

  • 効果的なチームには、心理的安全性を含む5つの因子が関係していた
  • 心理的安全性は、他の因子の土台となるために圧倒的に重要だった
  • 心理的安全性が高いチームには、以下の特徴があった
    • 離職率が低かった
    • 収益性が高かった
    • 「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍あった

「ふむふむなるほど、心理的安全性があると効果的に働けるんだな!」ということはざっくりわかりますね。

ただ、どんな理屈で効果的に働けるのか?はまだちょっとわかりにくいですよね。

それについて、「心理的安全性のつくりかた」では、以下のように解説されていました。

心理的安全性が効果的な主な理由
  • 心理的安全性があることにより、チーム内で情報が積極的に共有されるようになったり、意見の衝突頻度が増えるようになる。それによりチームが学習していくことで、パフォーマンス向上へ繋がる。
  • 心理的安全性があることにより、タスクにおいて意見の衝突が起こるようになる。(いまやるべき?その方法だとこんな問題があるよ。etc)その結果、イノベーションやプロセス刷新が促され、パフォーマンス向上へ繋がる。

心理的安全性は、チームや組織の学習や、イノベーション・プロセス刷新に寄与することで、最終的にパフォーマンス向上に繋がるということです。

「どうにかしてパフォーマンスを向上させていきたい」という場合には、心理的安全性向上を視野に入れてみるのも良さそうです。

ただ、「学習は、心理的安全性の状況に依らず、普段の業務の中で個人が各々見出していくべきもの」または「学習は、業務とは切り離してプライベートでするべきもの」という考えですと、あまりピンとこないかもしれません。

心理的安全性についてのよくある誤解

ここまで、「心理的安全性とは何か?」「どんな効果があるのか?」について触れてきましたが、その言葉が持つイメージからか、誤解されて広まってしまっているのも事実です。

ここでは念の為、よくありそうな誤解をいくつか紹介しておこうと思います。

誤解①:くだらない話もできて仲が良いから心理的安全性は高いよ!

話しやすい状態のように思われますので、良いチームなのは間違い無いでしょう。

そのチームの中で、「このタスクって本当に必要なんだっけ?」「この進め方が一番良いんだっけ?」「勉強会でこんなアイデアを知ったんだけど、試しに1~2週間試しにやってみない?失敗するかもだけど」的な会話を、変に思われる心配なく繰り広げられていたら、間違いなく心理的安全性の高いチームです。

逆に、雑談はしているし、チャットも和気あいあいとしているけど、上記のような話し合いができていなかったり、あえて議論を避けているようなふしがあるとすれば、心理的安全性は低い状態だと言えます。

誤解②:アイデアを募るとたくさん出てくるから心理的安全性は高いよ!(最終的な決定事項には納得していない人がいて、成果も出にくい状態)

こちらも、「そもそも発言や提案がされない状態」ではないので、良いチームではあるでしょう。

ただ、本当に心理的安全性が高いのであれば、「決定事項に対して、自分はまだこんなところがわかっていない」などの発言が出てくるようにも思えますので、納得していない人が多い状態なのであれば、やはり心理的安全性は低い状態だと言えるでしょう。

リスクの無い発言や提案ができるかどうかではなく、リスクのある行動を、心配することなくとれるかどうかがポイントです。

誤解③:いつも特定の人は臆することなく発言してくれているから心理的安全性は高いよ!

人によってはそんな人も当然いますが、それだけでは判断できません。

そもそも、そのチーム内の人であれば誰しもが、勇気なんて持たなくても行動できる状態が、心理的に安全な状態です。

ですので、一部の人が勇気を振り絞って行動してくれている状態は寧ろ、勇気を出す必要がある程度には、心理的な危険が潜んでいる状況なのでしょう。

誤解④:「なんでも話して良いよ」と言っているから心理的安全性は高いよ!

マネージャーからそのようにコミュニケーションを取ること自体は重要なことです。

が、それを言っている = 心理的安全性が高い という訳ではありません。

誤解についてパッと浮かぶところはこんな感じでしょうか。

そもそもなぜ誤解が広まってしまったのかについては、正確な情報は辿れていないので定かではないのですが、「安全」と「安心」の意味が日本では混同されてしまっているからではないか?という説があるようです。

そう考えると確かに誤解にも納得がいきますね。

もし、誤解が広まっている経緯について詳しい方がいましたら、是非コメントなどでお知らせいただけると大変うれしいです。

心理的安全性の4つの因子

この章では、今後の話のために、書籍で紹介されていた「心理的安全性の4つの因子」について、概要だけ触れておきたいと思います。

本当にさらっとだけ触れるので、詳しく知りたい方は書籍を参照していただくのが良いです。

書籍によると、日本においては、次の4つの因子が満たされているとき、心理的安全性が高いと感じられるとあります。

  • ① 話しやすさ因子
    • 話す、話を聞く、相づちを打つ、雑談するetc
  • ② 助け合い因子
    • 相談する、相談にのる、自分一人では対応できないと認める、チームの成果を考えるetc
  • ③ 挑戦因子
    • 挑戦する、機会を与える、新しいことをする、失敗を歓迎するetc
  • ④ 新奇歓迎因子
    • 個性を発揮する、強みに応じて役割を与える、違いをただ違いとして認めるetc

次の章では、それらの因子(と、因子に紐づく行動)を阻害してしまっている、よくありそうだなぁと思うパターンを紹介していきます。

本当であれば、「じゃあどんな言動が良いだろうか?その理由は?」まで書こうかと思っていたのですが、大長編になって大変なので、今回は割愛しています…

心理的安全性を阻害するBadパターン

「話しやすさ因子」を阻害すること

  • 相手の目を見て話をきかない。
  • 相手の話しに相づちを打たない。
  • 雑談しない。認めない。
  • 悪い報告があったとき、ミスを責める。
  • 課題に思っていることや問題を報告したとき、「じゃあ、◯◯さんやっといて」と戻ってくる。
  • 何かに付けてすぐ怒鳴る、大声を出す。
  • 提案時、資料の些細なミスをあげつらう。
  • 反対意見が出てきたとき、「いやそれは〜」「でもさぁ〜」とすぐに抵抗する。
  • わからないことを質問したとき「自分で考えた?」「わからないの?」「前も教えたよね?」と言う。
  • 会議で、ちょっとした思いつきが発言されたとき、上司やマネージャーから冷たくあしらわれる。

「自分の話に興味を持ってくれてないな〜」「忙しいんだろうな〜」と思わせてしまったら、当然「本当に重要なこと以外は話さなくていいかなぁ〜」と思ってしまいますよね。

また、報告した結果責められれば、例え本当に100%その部下のミスが原因だったとしても(実際にはそんなことはあり得ないと思いますが)、報告する = 自分にとって損 という構図を学習してしまいます。

課題の提案も同様です。良かれと思って発言や行動を起こしても、自分の負担が増えるだけで、更にはそこで失敗して責められでもしたら、発言せず静観しているのが一番得な行動になってしまいます。

重要なことは、業務に関してでも、業務と関係無いことでも、「話す」という行動を積極的に推奨すること、「行動」と「行動の内容」をしっかり分けてフィードバックすることでしょう。(発言してくれた行為そのものは、どのような内容であれ、歓迎したいことのはずです)

「助け合い因子」を阻害すること

  • 何か問題が起きたり、失敗したときに、「誰のせい?」と犯人探しをする。
  • 評価は全て減点主義。
  • 相談をするために、厳格なルールが定められているなど、相談に対するハードルが高い。
  • 相談を持ちかけられたとき、嫌な顔をしたり、時間が無いことを理由に断ったりする。
  • 与えられた仕事は◯◯という役割の人が責任を持って一人で遂行するべき、という風潮、仕組みにしてしまう。
  • 個人としての成果のみを重視して、チーム全体としての成果を考えない。

減点主義や、それに近い雰囲気が漂っていると、できるだけ減点される要素を減らそうと考えますよね。そうなれば当然、自分が組織から明確にアサインされた仕事以外に手を広げることは、純粋なリスクになります。

ちょっと困ってるから相談したいけど、そのためには何らかのルールに則って行う必要があったり、「相談は相手の時間を奪う行為である」という風潮になっていれば、その場合もやはり「仕方ない、みんなのことを思って、みんなに迷惑を掛けないために自分ひとりでなんとかするか…」と思ってしまいます。 相談のアクションに対する反応がネガティブだった場合も同様です。

また、組織として「◯◯(ある作業)は△△(役割名)が担うべし」という決まりも、それだけが表にでてしまうと、当然のことながらその枠内だけを努力しようとするでしょう。

「マネジメントコストを減らすこと」だけにフォーカスすれば、個人は決められた仕事だけをやる仕組みにした方が管理がしやすいのは間違い無いと思いますが、その管理をなんのためにするのか?そしてそれは果たしてマネジメントしていると言えるのか?を考えることが重要かもしれません。

「挑戦因子」を阻害すること

  • 何かアイデアを持ちかけたとき、「それ、本当にうまくいくの?効果あるの?」と問い返す。
  • 「これまでやったこと無いから」「今と違うから」という理由でNGを出す。
  • ちょっと非現実的のように思える提案に対して、即「いや、うちの会社(うちのチーム、いまの状況)では無理だよ、合わない」と返す。
  • 企画自体は会社に承認されたものだが、実際やってみて失敗したら、実行者の評価に影響が出る。
  • 極端に失敗を避けようとする。

そもそも新しいことにチャレンジしようとするとき、書籍やカンファレンス、ネットなどである程度の情報は仕入れることができますが、100%上手くいく保証なんてどこにもありません。

「上手くいくかもしれないし、失敗するかもしれない。」というのはある程度仕方の無いことですので、「本当に上手くいくか?」と問われれば「わからない」と言う他ありません。

完璧を求められるのであれば、やはりリスクを伴ったチャレンジは受け入れられないんだ…と学習していき、何も変えることのできない環境になっていくでしょう。

ここで重要なのは、短期ばかりに目を向けるのではなく、長期を見据えてある程度の失敗リスクは許容してでも成長していけるチーム・組織としての目標を業務として設定することと、仮に失敗したとしてもリスクを最小限に抑えられるよう、小さな挑戦を推奨することのように思います。

「新奇歓迎因子」を阻害すること

  • 強みや個性をいかすのではなく、決められたら役割のなかで当てはめる
  • 同じ考えの人だけでまとめる。そのような人選をする。(特に経営陣でそのような状態はよろしく無いようです)
  • 人を、一律に扱うマネジメントをする。
  • 採用において、意識して多様性を取り込もうとしない。

VUCAの時代(変動が激しく、不確実性が高く、複雑で、曖昧な時代)に、チームや組織として競争力を保ち続けるためには、個々の多様性を尊重して強みを掛け算し、それを全体として一つの方向にマネジメントしていく必要があるとのことです。

ですが、「◯◯という役割であれば、全員が同じようにこの作業をするべし」とされてしまうと、弱みをカバーしあいながら、強みを活かすことができません。

また、組織のほとんどが同質で構成されていると、異質な価値観の人は自分の声に重要性を感じなくなり、組織に所属している感覚も薄れるそうです。

チームや組織としては、同質でない人も声をあげやすくなるよう配慮することと、意識的に多様性を取り入れていくこと、そして、そもそものところで、個々の価値観をお互いが知ろうとすること*6から始める必要があるのかもしれません。

おわり

以上となりますが、「それって違うのでは?」というご指摘や、「こんな言動もあるよね〜」などあれば、ぜひお知らせいただけると助かります。

今回は、心理的安全性そのものと、よくありそうなBadパターンのみの紹介でしたが、「心理的安全性のつくりかた」では、4つの因子の詳細な解説から、「心理的安全性を高めるためにはどのようなリーダーシップが求められるのか?」「行動分析学にそって、いかにして心理的安全性を高めていくか?」などがわかりやすく書かれています。

もし、この記事を読んでちょっとでも興味が湧いた方は、ブログ末に書籍へのリンクがあるので、購入して読んでみても良いかもしれません。

比較的読みやすい文体と、内容もわかりやすく説明されているので、早いひとなら2~3日で読めると思います。(僕は遅いので2週間くらいかかりましたが…)

…と、あまり「ユニファ」要素がほぼ無い記事でしたが、楽しんでいただけたら幸いです。

そして、共に心理的安全性の高いチーム・組織を作ろうという熱い思いのある方は、是非一緒に働きましょう!!!

それではまた次回。

unifa-e.com

*1:https://www.amazon.co.jp/dp/4820728245www.amazon.co.jp

*2:

*3: speakerdeck.com

*4:https://web.mit.edu/curhan/www/docs/Articles/15341_Readings/Group_Performance/Edmondson%20Psychological%20safety.pdf

*5:心理的安全性のつくりかた p22

*6:チーム内でお互いの価値観を知っていく方法としては、アジャイルサムライで紹介されているドラッカー風エクササイズ(リンクは別のブログ)がおすすめです。社内の方であれば渡部までご相談いただければ嬉々としてファシリに伺います!tech.pepabo.com