
はじめに
こんにちは、ユニファでプロダクトマネージャー(PdM)をしている石井です。
今回は、Slack から n8n のワークフローを起動し、BigQuery での集計結果を返す「データアナリスト園児」Bot をつくった際の試行錯誤について書きます。
私は 2026年1月にユニファへ入社しました。入社直後は、PdM としてユーザーがプロダクトをどのように使ってくれているかを理解するため、顧客訪問で現場感を掴みつつ、操作ログやデータベースなどデータの観点からも理解を深めていきました。
ちょうどその頃、社内では n8n の試験導入が進んでいました。 n8n のキャッチアップとあわせ、私が入社直後にデータからユーザーを理解していく体験を、n8n を使ってもっと手軽に、誰でも始められるようにできないか、と考えていました。 具体的には、Slack で「どの端末でよく利用しているの?」「どの機能をよく利用しているの?」のように自然言語で質問すれば、集計データや分析結果を返してくれるイメージです。 今回は、その最初の一歩として、Slack で質問をして簡単な集計データが返ってくるところまでを n8n で試してみました。
作りたかったもの
Slack で Bot を呼び出し、「◯◯機能の利用状況が知りたい」のようにデータに関する質問をすると、スレッド内で Bot が曖昧な言葉や集計期間などをヒアリングしてくれ、必要な情報がそろったら、社内のデータ分析基盤にクエリを実行し、返ってきた結果を踏まえた簡単な考察まで、同じスレッドで返してくれる、そんな体験を想定していました。 ここでいう考察は、統計の厳密な結論というより、集計データを読み解き、次に何を確認すべきかを一緒に整理するくらいの温度感です。
入り口を Slack にした理由は、ふとした利用状況への疑問はチーム内の会話から生まれることが多く、その会話が起きる場所も Slack であることが多いためです。 疑問が湧いた流れのまま質問できることに加え、スレッドをあとから読み返したときに根拠となる数値がそこに残る、という利点もあると考えました。
n8n については、はじめに書いたとおりです。 ワークフロー基盤としての優劣を横並びで比較して最適解を選んだ、というよりは、試験導入のなかで手を動かしてキャッチアップしたかったという動機が大きいです。
全体の構成
大まかな流れは、Slack から Webhook で n8n のワークフローを起動し、スレッド内でコンテキストを保ちながら AI エージェントがヒアリングもしくはデータ分析結果をSlackで返信するというものです。
処理のフローは以下の図のとおりです。

Slack から Webhook で n8n を起動したあと、If ノードで初回投稿なのかスレッドの続きなのかを分岐します。 初回ならそのメッセージをそのまま AI エージェントへ渡し、続きならスレッド内の会話を取得し直して JavaScript ノードで整形してから渡します。
AI エージェントノードが、ヒアリングを続けるか、分析を開始するかを判断しています。 AI エージェントノードのツールとして BigQuery(社内のデータ分析基盤) に接続します。 今回は動作検証のため、静的な集計クエリを 1つだけ置きました。
最後に、AI エージェントノードは、追加のヒアリング内容もしくはデータ分析結果を Slack Reply ノード向けに出力し、Slack Reply ノードが Slack に返信する、という構成です。
工夫したこと
1. Slack スレッドのコンテキストを維持する
最初は、Webhook で届いたスレッド内の最初の投稿の ts(タイムスタンプ)をキーにして、AI エージェントのメモリに会話を残し続ける方法を試しました。 ところが、やりとりが長くなると最初の質問内容を忘れてしまうことがあり、苦戦しました。 Slackスレッドという UI 上のコンテキストと、AIエージェント内部のコンテキストがズレると、人間から見ると突然「話が通じなくなる」体験になります。今回はそのギャップが最初の壁でした。
そこで方針を変え、トリガー起動した Slack 投稿の ts(タイムスタンプ)を手がかりに、毎回スレッド全文を取得し直す構成に切り替えました。 取得した履歴を JavaScript で整形し、毎回まとめて AI エージェントに渡すことで、スレッド内のコンテキストを維持できるようになりました。
2. ヒアリングの深さと離脱のバランス
普段データ分析をアナリストに依頼するときも、アナリストは分析の背景や指標の定義などを丁寧に確認します。 その振る舞いをプロンプトで再現しようとしました。 最初はシンプルに、以下のような文言をプロンプトに入れました。
You are an expert Data Analyst.
Your goal is to conduct hearings and perform analysis to the questions.
Continue hearing until you have gathered all the information necessary for data analysis.
実際に動かしてみると、ヒアリング自体はよくできていた一方で、詳細な確認が何ラリーも続き、質問者の離脱が容易に想像できました。 そこで 「ヒアリングは最大 3 ターンまで」 という制約をプロンプトに追加しました。必要最小限の確認に絞りつつ、要件が曖昧なまま分析を開始しない、というバランスを狙っています。
上限の「3」自体は感覚で置いた数字です。 その最適値かどうかは、利用者の反応を見ながら、今後チューニングしていく必要があると思います。 データ分析結果の正確性と、一連の体験を完走させるための摩擦を小さくすることはトレードオフです。 今回は、一連の流れを体験してもらうために上限を設けました。
3. 親しみやすいキャラクター設定(データアナリスト園児)

初期は「優秀なデータアナリスト」設定でプロンプトを書いていましたが、返答が堅苦しく長くなりがちで、自分で使っていても詰められている気分になり、居心地が悪かったです。 ユニファは保育施設向けにサービスを提供しているため、キャラクターをデータアナリストの園児に寄せてみることにしました。
様々なプロンプトを試してみたのですが、ひらがなが多く読みづらくなってしまったり、園児のはずがギャル風の返答になってしまったりと、狙いとはズレることもありました。 そのなかで、次のようなプロンプトのニュアンスがデータアナリストの園児 のイメージに最も近く、最終的に採用しました。
You are an expert Data Analyst. You are a six-year-old who speaks firmly but in an endearingly casual way.
キャラクターは本質ではないのですが、こういう親しみやすさも利用頻度に直結すると思っています。 結果として、正確さや読みやすさは落とさず、親しみやすさが高められたかなと思っています。
できあがったもの
今回作成した Bot に実際に質問したやりとりがコチラになります。

最初の投稿では、「2026年度に入ってからの連絡帳のアクティブユーザー数の変化を知りたい。」 という曖昧な質問をしてみました。 作成したプロンプトの意図どおり、分析に入る前にアクティブユーザーの定義など必要な情報を箇条書きで確認しています。
ヒアリングに答えると、Bot は集計結果の数値を返してくれました。ここで返ってきたのは、2025 年度末と 2026 年度はじめを比較した結果でした。 たしかに私の伝え方が悪かったのですが、知りたかったのは 2025 年度の初めとの比較だったので、その旨を続けて質問しました。 すると、今度は意図どおりにそれぞれの年度の最初の週同士の比較を返してくれました。 単に一覧を出すだけでなく、年度初めの週同士で見ると利用者が増えているといった、読み取れる事実も一言添えてくれました。
最初の質問に対しては、ここまでで一通り答えが得られた形になります。 そのうえで、「他に何かわかったことはある?」と広めの質問もしてみました。 すると、2026 年 3 月の最後の週から 4 月の最初の週にかけて利用が減っている事実と、その理由に関する仮説を返してくれました。 その後、私は「新入園児の親御さんでまだ連絡帳を送ることに慣れていないとかもあるかもね」と別の仮説を返してみたところ、Bot は適当な返しをするのではなく、現状のデータでは新規利用と継続利用を分けて分析できない旨をはっきり伝えてくれました。
今後の改善点
今回はお試し実装ということもあり、AI エージェントノードが実行できるクエリを静的な 1 つにとどめました。 今後はより実用性を高めるために、動的にクエリを書いて自由に分析できる状態を目指したいと思います。
そのためには、データマートやメタデータの整備が先に必要です。社内のデータエンジニアの方と一緒に取り組んでいく予定です。 あわせて、実際に社内で利用してもらいながら、ヒアリングと分析が本当に適切にできているかどうかの検証も進めたいと思います。
おわりに
今回は入社直後ということもあり、比較的自由にお試し要素の多い取り組みでした。
それでも SRE の方には Slack 連携やサービスアカウントキー発行などで手厚くサポートいただき、とても助かりました。 同僚のプロダクトマネージャーの方々からは、Slack でリアクションをくださったほか、自然言語で質問するとデータ分析の結果が返ってくる体験への期待も大きい、という反応をいただきました。
短い期間でも「相談すれば親切に聞いてくれる」「一緒に試してくれる」人が多い会社だなと実感した取り組みでした。
ユニファでは一緒に働いてくれる仲間を募集しています。 興味を持っていただけたら、採用情報もあわせてご覧ください。 jobs.unifa-e.com