デザインチーム所属の三好です。
コロナの影響でほとんど外出することがなくなり、本を買い漁って家に籠っていたらいつの間にかこの生活が心地良くなってきました。
最近はデザイン関連のものの他に、写真集や政治に関する書籍、聖典「ヴェーダーンダ」の指南書などを読んでいます。
半分は個人の趣向ですが、この先ずっと創作に携わるのなら専門外の世界もなるべく取り込んでおけば、最終的にアウトプットする段階でそれは必ず糧となるはずです。(たぶんヴェーダーンダでさえも…なるはず…なればいいな)
そのための膨大な節操のないインプットが今回の引き籠り生活で多少は実行できたと思います。
ビジネスパーソンのための"デザイン経営"ハンドブック
これは特許庁から無料で発行し公開している色んな意味で衝撃的な資料です。
若林恵さんという尖った感性を持つ著名な編集者が携わっていて、それが国から出ているということに驚きますし、ビジュアル同様に内容も素晴らしいのですがなんとなく目を通すにはあまりにも濃密でやや骨が折れる内容ではあるので、ここでは特にたくさんの人の目に触れてもらいたいと感じた2つの章のみ添付します。
これはデザイナーのための資料ではなく、デザインに関わる人に向けた資料です。 全てのビジネスパーソンに関わる内容と言っていいと思います。
普段から悶々と感じてはいても中々自分自身のスキルでは言語化が難しい部分を、高い次元で表現してくれているので原文をそのまま共有させていただきます。
興味のある方はこちらから全ページPDFで無料ダウンロードできます(全16頁) https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200323002/20200323002-1.pdf
考察
この数年間でデザインの多様化は猛スピードで進んでいて、もはやデザイナー自身でさえ一体何がどこまでできればデザイナーと言えるのか、わからなくなっている人もいると思います。少なくとも私はそうですし、個人的な経験の浅さもありますが自分自身がデザイナーと言われることには違和感しかありません。
ただ曲がりなりにもインハウスデザイナーとして仕事に携わっていたら、今世の中に求められているものは論理的思考力であるということには気がつきました。
例えば今とても重要視されているUI(ユーザーインターフェース)デザインですが、それには必ずしっかりとしたガイドラインが存在していて、そのルールに沿って作成していけばなんとなくそれらしいデザインが完成します。
しかしそこに留まってしまうとデザイナーとしての自力はおそらく育まれない。その先へ進むには高い思考力と、また作業時間も大幅に必要となります。
なによりインハウスデザインにそれが求められているか、追求できる環境にあるかという大前提の問題がありますが、デザイナーという種族は同じ場所に立ち止まることが許されず、常に個人としての行き先を見据えて行動しなければならないと考えると、今置かれている状況だけを基準に判断することはとても危険です。
ただこれを実行するのは本当に難しくて、そもそも自分の身に置きかえてみるとなんとなくのデザインを作ることさえ四苦八苦していますが。
ところでインハウスデザインの仕事は多岐に渡ります。
WEB、アプリの他にもバナー、チラシ、パンフレット、広告や名刺、必要であれば写真撮影やイラスト、そしてコードも書きます。 その中で紙媒体、グラフィックデザインと呼ばれる分野にはUIデザインのようなガイドラインは存在していない為、自ら情報を整理して最善の方法を探りながら要素を組み立てていきます。それは考える力、個としてのデザイン力が身につきます。
デジタルファーストの現代ではどうしてもグラフィックデザインの重要性は低く見られがちですが、思考力を引き上げるためにはそれを極端に軽視するべきではないと個人的には感じています。
まとめ
その論理的思考力というのが上の資料で語られているデザイン思考(デザインシンキング)ということになると思います。
6章ではデザイン思考の重要性、それは常にオープンエンドであり続けること、予想外の発見を柔軟に受け入れられる思考回路を持つことなどがこれからは必要であると書かれています。”解のない世界に、勇気を持って飛び込む”という言葉が印象的です。
7章では企業の文化性を表現することの重要性、ビジネス上の意味の発想からの脱却についてなどかなり大胆な話を展開しています。そしてインハウスデザイナーとしての価値や使命についても触れてあります。
デザイン思考という言葉のとおり、それはデザイナーが常に普段から意識して仕事に臨んでいる思考回路のことであって、その道のプロフェッショナルでもあります。
未熟な自分自身のことは棚に上げちゃいますが、弊社のデザインチームには基本的にその思考力が備わっていますので、このチームからデザイン思考がもっと広いフィールドへ浸透していくための足がかりになればいいと思いますし、また直接的な数値が見えにくいなどの様々な理由で過小評価されやすい現状が少しずつでも改善されていくことを願っています。