ユニファ開発者ブログ

ユニファ株式会社プロダクトデベロップメント本部メンバーによるブログです。

他者の生活を変えることのハードル

こんにちは。 エンジニアマネージャーの田渕です。

気付けばコロナ生活が始まって一年半以上、「マスク暑い!」な季節は2回目ですね。 天気予報アプリから「今日の日中は外に出ない方がいいです」なんて警告まで出てしまう昨今、皆様体調管理にはくれぐれもお気をつけください。

さて、本日はそんなコロナ生活の中で、自分に起こった変化と気づきについてのお話です。

マスク。マスク、マスク、マスク、……。

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可愛いマスク
マスク。

以前から春先はマスクの方が多くいらっしゃいましたが、コロナ生活の中ではその着用が(ほぼ)義務付けられるようになりました。 マスクだけじゃ不十分だからと、アクリルの衝立やビニールシートなどなど、様々なものを利用して人と人の距離を取る/物理的な壁を作る生活になりました。

次々と設置されるアクリル板、ビニールシート。 昨日まではなかった場所にも透明の何かが増えていく。 そんな中、ある日ふと気づきました。

聞こえない。

なんのこっちゃと思うでしょうが、これは端的にそのままの意味です。 マスクとアクリル板越しに話す人の言葉が、私には理解出来ませんでした。 相手の言っている言葉が分からない。聞こえてないのです。 それだけでなく、ちょっと大きめの会議室で会議するにも遠くの人の言葉が聞こえない。 多分、みなさんある程度はコミュニケーションの取りづらさを感じてらっしゃるとは思うのですが、そういう次元ではありません。

実は私は「一側性難聴者」というもので、平たくいうと左耳が聞こえていません。 先天ではなく後天的なものですが、3歳の頃からなので本人の意識としては先天性のものと変わりません。 プライベートで付き合いのある近しい人たちは知っているので右側から話しかける感じなんですが、仕事上は初対面の方とも関わりますしキリがないので、特に言って回っていたわけでもありませんでした。 これまでの生活の中で、確かに多少人よりも聞こえない・聞きづらい場面はありましたが、会話が成り立たないほど聞こえなかったことはなかったんです。 私自身、アルバイトで接客業をしていたこともあるくらいです。

「あれ、どうしようかな。」と、淡々と思いました。 *1

そうか、今こそ試す時か!

とは言え、対策が無いわけでもありませんでした。 実は以前から「一側性難聴者用の補聴器」というのを調べていて情報を集めていたのですが、別にどうしても無いと困るものでもないしなぁ。。。とお店に行くまでには至っていなかったのです。 が、買い物もままならん!となるとそうも言っていられません。困る。 ということで、事前に目星をつけていた補聴器のお店に足を運びました。 状況のヒアリング、聴力測定に続いて、候補となる製品や価格帯、出来ること出来ないこと、などなどを担当の方に色々と説明頂き、その場でお試し用のレンタル品を借りて帰宅。

「慣れるのには平均数カ月かかります。」

「人によっては慣れるまで頭痛がしたなんて方もいます。」

なんて注意書きの書かれたパンフレットを見ても「なんで???」と今一つピンと来ないでいましたが、使っていくうちに意味が実感できました。

片側が聞こえない人は、両耳聞こえている方と比較した時、同じ場所に立っていても音の情報量が多分半分くらいです。 一側性難聴者用の補聴器というのは、聞こえていない方の耳に音を拾う機械をつけ、聞こえている方の耳につけた機械に飛ばすという仕組みです。 つまり、一側性難聴者が補聴器を利用すると、単純に入ってくる音の情報量がそれまでの倍になるんです。 それによって、脳みそが「ちょっと待て。仕事が多すぎる。」と言い出すんです。 私は「ちょっと頭が疲れる!」と思った程度で頭痛がするまでは行きませんでしたが、確かに加減を間違えるとそうなる人も居るだろうなと。 「あーそうか。私の脳みそ、ある日突然に負荷が倍になったサーバーと一緒か。それは確かにちょっと戸惑うな。」(職業病)と納得しました。 (私の体感なので、必ずしも皆同じではないと思います。)

これは別に補聴器に限ったことではなく、コンタクトレンズとかも少しずつ使う時間を伸ばしながら慣れてくださいねーと言われるので、まあそう言うことかと理解しました。 そこからは、地道に使う時間を伸ばしましたが、幸いにも一週間くらいで外出時は常につけて居られる程度には慣れました。

未経験のものを想像するのには限界がある

補聴器の中でも一側性難聴者用の補聴器と言うのはマイナーな商品であるため、全てのメーカーさんから出ている訳ではありません。(というか一部のメーカーしか出していない。) 私が購入の候補にしているメーカーさんが全て海外のメーカーさんだったため、海外のレビューサイトを読み漁ったりYouTubeの紹介動画を見たりして色々と情報を集めて居ましたが、 そこでふと目にしたコメントにすごく納得しました。

「私はこれを使うまで、自分を障がい者と思っていませんでしたが、今ははっきりと自分は障がいを持っているのだと自覚しています。」 *2

そうなんですよね。

ほぼ先天的に片耳が聞こえない世界で生きていると、それしか知らないので、自分に届いている音が人と比べてどれくらい足りないのかは分からないんです。 別に、それでものすごく困っている訳でもないし、まあそんなもんだろうと生活してきている訳です。 が、補聴器を使い始めて慣れた今では、実は外に行くのに補聴器なしはちょっと不安だなと思うようになっています。 強制されている訳でもないのに、外に行くときには絶対に着けていく。

はっきりと生活習慣が変わりました。

これは、補聴器を利用するようになって、私自身が「今までこんなに聞こえてなかったんだ」という自覚・気づきを得たからこその現象です。 必要性に迫られ使った結果、自分で実感を持って「これは便利だ・必要だ」と思えるようになったからこそ生活に根付いたのであって、例えばコロナが流行る前の世界で「いや使った方が便利だよ。」といくら言われてもきっと私は動かなかったと思います。

生活を変えることのハードル

「ものづくり」をする自分の立場で言えば、究極の目標は「自身の作ったもので利用者の生活が変わること」です。 使ってくれた方の生活がちょっとでも便利になったり、楽になったり、そういうことを目指しています。 それが業務システムであることもあれば、IoT機器だったり、スマートフォンアプリケーションだったりもします。

今回、奇しくも私は「テクノロジーによって生活を変えられる」側になりましたが、改めてテクノロジーの偉大さを実感した一方で、

  • 利用者の中で当たり前になっていることを覆すことの難しさ
  • 未利用の人が、使った後の便利さを使う前に想像し期待することの難しさ
  • 利用者の方にこれほどの実感を持って「役に立つものだ」と思ってもらえないと根本の生活を変えられない

というハードルも感じました。

とはいえ、なかなかに興味深い体験をさせて頂くことが出来たので、何かの形で自身の仕事に役立てられたらいいなと思っています。 ちなみに、聴力は年齢を重ねるにつれどんな人でも少しずつ落ちていくそうですので、皆様もお気をつけください。(30才あたりから徐々に下落幅が大きくなるらしいです。)

ネットワーク越しではなく実際に私に会う機会のある皆さん。そんな訳で次に皆さんに会うときには私の耳には補聴器があると思いますが、そんな理由です。 会議中に携帯触ってたら補聴器のチューニングしてるんだと思ってください!(携帯のアプリからコントロール出来るんです。) *3

仲間を募集中!

ユニファでは、仲間を募集しています。

ご興味をお持ちの方はぜひ一度、お話を聞きにきてください。

unifa-e.com

*1:Web会議は全く問題なく聞こえてますので、お仕事で関係している皆様はご心配なく!

*2:英語のコメントを日本語訳してるので少々不自然ですみません。。。

*3:実は既に最近は会社にはして行ってたので、知らず目にしている方もいたかもしれません。